年間ベストと年間でベストだったもの

さて。
今年も2DCOLVICSさんのところで年間ベスト選ばせてもらいました。
ベストアルバムがこれで
http://blog.livedoor.jp/colvics/archives/52267670.html

ベストソングがこれ
http://blog.livedoor.jp/colvics/archives/52267669.html

見ての通りの内容ですが、一応コンセプトとしては「何度もリピートしたものでなおかつ未来志向だと思った物」です。

で、今回ベスト作るためにずーっと買ったもの聞きなおしてたんですが、最終的に出来たランキングと自分の年間の所感みたいなものがちょっと違ってきたんで、ここで言い訳みたいなエントリが始まるわけです。優しい目で見守ってください。

エモはどこに行くのか

ここ数年の日本語ラップは割と「エモい」がテーマだったような気もするわけです。海外ともシンクロするKOHHに代表されるアーティストの活躍だけでなく、バトルなんかでの感情のぶつけ合いもまた「エモい」のだと思うのです。海外の先端と日本独自のバトル文化は「エモい」でつながってるというか、感情的なものをどのように表現・解釈するかというのがここ数年の主流だった気もします。今年のランキングや活躍したアーティストたちや期待するアーティストたちを考える上で「エモいのあと」みたいなものは重要な部分なのだろうなあと思います。

女性アーティストがすごかった

今回ランキング一位に入れたのはAWICHなんですが、今年は女性がむちゃくちゃ凄かった。コージーさんも「2017年、CMBあったのとは別にMARIAも、NENE a.k.a Sophieeもあっこゴリラも、椿も、HITも、AWICHも、ちゃんみなも、Chelmicoもdaokoも泉まくらも春ねむりももつ酢飯もリリスクもライムベリーも出てたし、フィメール大躍進なのでは?」ってツイートしてたけど、まさにその通りというか。今年は女性の日本語ラップ的には重要な年だったと思います。何というか、みんな一歩踏み出したというか、あまり男性性と対峙をしなくてよくなったというか、オリジナルなものに一歩近づいたというか。個人的には象徴的なのはELLE TERESAなんですが。あっこゴリラがSpotifyのCMに抜擢されたり、DAOKOがBECKとやってたりとか、もう来年にはさらに景色変わってると思います。アイドルラップも「ラップ好きのアイドル」が出てきて、「ラップ好きのアイドルがラップをやる」が普通になったのが今年だった気がします。来年以降は「アイドルがラッパーになる」のでしょうし、それが普通になっていくのだと思います。

引きずられるようにエモくなった人たち

今年はヒップホップ警察というか、リスナーのエモさも高まっていたように思います。ツイッターではプロリスナー()が誕生し5chに単スレが出来たり、バトルの実況者に固定アンチが誕生したり、ヒップホップをきっちり語ろうという取組は最終的にゲンロンカフェにKダブ先生を降臨させるというなかなかの超展開もあったわけです。やっぱ今年すごかったですね。今年じゃないとあり得なかったと思う。ただこの手の案件が最終的に何かしらのコンセンサスを得るとこまで言ったわけではないというか、散発的な戦闘に留まってる感じも見受けられるので、来年はもっと次の展開が出てくると面白いですね。個人的にはヒップホップ語りをするユーチューバーが出てきたりしないかなと(自分では絶対やらない

ラップに韻は必要か

今年個人的に一番衝撃を受けたと言える作品はminchanbabyの「たぶん絶対」なんですよね。なんというか、割と自分も「韻律を無視して絶叫したりわめいたり泣いたりするのがエモいんだろ」みたいに思ってしまっていたところに「ラッパーとしてきっちりラップした上でエモい」というのを見せつけられたのがこれだったというか。キャラクター性、テーマ性、リリックの複雑さ、韻の気持ち良さ、言葉のハメかたなど、むちゃくちゃ高度というか「ヒップホップの気持ち良さ」みたいなものを思いださせてくれた上で「似ているものが無い」という。そしてエモいという。冒頭の「ラップに韻は必要か」という問いがあるとすれば「その問い必要あります?」って返されるような作品がこれでした。

ニューカマーたちのフッド感とはどこにあるのか

個人的に今年面白い動きをしていたのは元々ニコラップとかのフィールドにいた野崎りこんや釈迦坊主+コカツテスタロッサ(CPCPC)などの面々やharuru犬lovedog天使やsleet mage、そこにシンクロしていくGokou kuyt、AWAZARUKAS、YUNGYU、RICK NOVAやTaeyoung Boyとかの面々で、来年がむちゃくちゃ楽しみなのもそのへんです。あと技術という意味ではitaqや嘯とかのラップスキルがこの先どうなっていくのかとか。この辺のメンツには「フッド感」があまり無いんです。でもこの先の時代、フッド感ってのは割と誰もが持ち得るものではないのかもしれない。インターネットの時代でのフッド感ってのは多分「土着」ではないのかもしれない、新たなフッドというのは地歴を必要としないのかもしれない、なんてことを思います。土着系フッドの最強チームとも言えるBAD HOPがいる今だからこそ、このあたりの活動も面白い。

来年はどうなるという話をする前にMC松島の話を

来年の話をする前に、MC松島の話を先に。最後の月だけ間に合わなかったものの毎月有料作品を出すというスタンス、「She's a Hero」の「オリンピック終わって一週間以内にリリースをする」というむちゃくちゃなスピード感、その他キャップやTシャツ、無料作品なども含めて、今年だけでMC松島は50近い商品を世に送ったわけです。これってとんでもないことで、ヒップホップの新たなハスリングスタイルを日本で展開していたのは彼だったと思うんです。音源出して終わり、CD出して終わりではなく、その音源やアーティストの独自性を高めるために音楽だけではなくどんな商品が考えられるのか。それをインディペンデントでやりきってたのがMC松島だったわけです。来年はマーチャンダイズの年だと思います。音楽は音楽として当然あるのですが、どれだけその世界観を加味したマーチャンダイズが加えられるのか。ただの派生グッズの展開ではなく、ブランド価値を高めるマーチャンダイズみたいなのってどんなんだろみたいな。そんなことを思ったりしました。

ではまた来年。