なぜハロプロのCDはこんなに売れなくなったのかを「ルックス」「楽曲」の話抜きで考える

まあ、いろいろな条件が絡んでるとは思うんですがね。コンテンツ自体の出来云々を抜きにしても売れなさすぎる。つんくに文句を言うのもいい加減疲れた気がするんで、別の方角から考えてみたいと思うのです。

まず、話のスタート地点の再確認。「ルックス」や「楽曲」に関してはここでは一切言及しません。なぜなら好みの問題だから。戦略に関してもあまり触れません。本当のところはわからないから。事実として「売れてない」理由を外部が売れている理由を探りながら考えます。


個人的にハロと他のアイドルを比較した際に重要なキーワードが「エンゲージメント」です。乱暴に一言で表現すると「(自主的な)愛着心」みたいな言葉なんですが、かつてのハロプロは他のどのアーティストと比べてもこのエンゲージメントが圧倒的に強い時期があった。新メンバーオーディションのガラス張り化による、観客もそのオーディションに参加しているかのような関係性の強化。各種メディアによる情報発信による「普通の子がアイドルになっていく過程」をみることによって、エンゲージメントは圧倒的に強くなっていった。この時期の他のアイドルやアーティストにはない部分だった。当時はただ捨て身なだけかと思ってたけど、今考えてみると「顧客との関係性において斬新」なアイドルだったんだなあ。
WEBの世界ではまだフォーラムと掲示板文化だった。ただ、ファンが自然にエンゲージメント成立させ、シェアを実現していたという稀有な状況がここにあった。「ハロプロのために!」という良くわからない目標の元に、様々なコンテンツが誕生し、そのコンテンツをシェアしていく過程でファン同士のエンゲージメントも成立していた。後にSNSなどが誕生する前から、関係は「ソーシャル」で「ネットワーク」が出来ていたんだよ。


ただその後、ハロはペースダウンする。アイドルのスキャンダルは数あれど、ハロの場合は小さなスキャンダルが致命傷になる要素を秘めていた。ファンとの関係性の強さが仇になり、小さな事件でも一度心が離れると潮が引くように引いてしまう。また周囲もつられるように引いて行ってしまう。
ハローが小規模化したことでステージ上は逆に充実した部分もあるが、失ったものも多かった。それが「エンゲージメント」だ。この時期に事務所とタレントとファンの間には溝が出来たのだ。前と同じような関係ではなくなってしまった。その時代を代表するのは松浦亜弥。圧倒的な才能でシーンを席巻したが、ファンとの関係性を必要としないキャラクターだった。完成したアイドルではあったが、スタイル自体は80年代のアイドルの焼き直しだった。逆にいえばそれを成立させた松浦亜弥の才能が図抜けてたんだが。


ただ、時代は一気にソーシャルネットワークの方向に向かっていった。一方的に発信するマスコンテンツが徐々に受け入れられなくなっていく。ただ、ネットに依存しないジャンルのタレントはギリギリ生き残っていた。それが浜崎あゆみであり、倖田來未だ。マスメディアとステージのみで活躍できた最後の時代だ。
WEBの進化とソーシャル化は確実にユーザー層の生活活動を変えた。特にSNSのモバイル化が進むにつれ、低年齢層の行動に大きく変化が生まれてきた。「足あと」や「ペタ」などで緩いエンゲージメントを作りはじめた。


そのエンゲージメントから取り残されたのが事務所でありハロプロだったんですよ。積極的に参加もしなかったし、また「マスメディア的なスタイル」でしか情報発信が出来なかった。
ソーシャルネットワークの中に入れず、地味にブログだけやってるのが今のハロプロです。ちょうどこのブログみたいに。SNSに代表されるような関係性の中に積極的にアプローチしていかなければどのコミュニティにも入れない。

AKBを考えると「やっぱうまく出来てんなあ」って思うことが多い。あの人数はユニット自体の多様性を出すのに必要な人員だし、握手会などでのCD販売をイベント化する上でも必要な人数があれだ。あれを「多すぎる」と思う人は時代とずれている。「あれだけいないとフォローできない」のが実情だ。

他のアイドルも「コミュニティ」「エンゲージメント」などのアプローチ力を強めていった。スタッフとファンのエンゲージメントという新たな切り口も生まれた。商品を販売するために購入活動をイベント化した。購入自体に別の意味合いを持たせた。


そのすべてに乗り遅れた上、未だに客席のメンタリティ変化に気づかず、ステージだけでなんとかなるとかマス戦略だけでなんとかなると思っているのがハロプロだ。今のハロプロはステージ上と客席の距離は限りなく遠い。物理的な話ではないよ。そしてファンが一方的に客席で関係性を作っている状況だ。
「客の動向を読み違え、販売方法も全く現状に即していない中、なおさら遠い方向を向いて商売をしようとしている」のがハロプロだ。漏れた客はそのままだし、新規は「ココはなんか違うな」って思っている。ステージ上の輝きはともかく、周りの行動はファンからみればタレントをかすませるようなやり方しかできていない。


ああ、結局文句になっちゃった。やめやめ。