橋本美香についてちょっと考えてみた。
まあ、そもそも、SKiは昔からそういうハッタリ勝負なところがあった。当初のメンバー募集の際には「夕方にレギュラー番組が出来てそれに出演する」みたいなことも言ってたし。
ただ、初代リーダーの吉成圭子という人間はアイドルとしては非常にクオリティが高かった。たたずまい、歌唱力など、アイドルとして必要なものはあらかた兼ね備えていた。高橋Pも「吉成との出会いは衝撃だった」というように、吉成圭子あってこそのSKiであり、SKi=吉成圭子だった。当初は。
橋本美香はSKiの5期生だったはずだ。おそらく1994年の合流。このころはもう吉成圭子が完全に独り立ちしようとしていたし、運営側との距離も多少離れていた。CDのリリースはキティだったが、契約も終了する直前。SKiが謎のメンバー募集で延命を図ろうと懸命になっていた時期だ。
結果的にメジャーとの契約は終了し、高橋はSKiごと「アイドルジャパンレコード」を設立する。吉成はソロで「魔法騎士レイアース」のOP曲などを歌い、アイドルジャパンレコードの取締役という立場に就任するが、実質的なSKiでの活動は95年位まで。その後は麻雀棋士に転身し、97年には引退してしまう。
その94〜97年の激動の時期に台頭したのが橋本だ。世を拗ねて地下にこもった高橋たちを支えたのは橋本だった。高橋は「今の日本の大手メーカーの大半は、音楽制作やアーティスト育成の能力が欠如しており、芸能界にとってほとんど頼りにならない存在に成り下がってしまった」と嘯いていたが、その言葉に安易に同調する人間など誰もいなかった。
21世紀になってもSKiの苦境は変わらなかった。ただ、地下で過ごしているうちに地下での過ごし方を覚えたと言えば良いのだろうか、少ない客でも何とかなるようになっていた。橋本は次々入れ替わりいなくなる制服向上委員会のリーダー以上の存在、女帝として君臨し、少ない客とSKiをつなぐ窓口として無くてはならない存在となった。SKiもファンと交際したらクビという厳密なルールはあるが、飽くまでも密接な関係を築かなければならない。まあ、どうでもいい話か。
SKiという組織を延命させるために活動家と化した彼女にあまり言うことはない。ただ、夢を見続けたまま大きくなった初台周辺のロック・レジェンド達と比較して、あまりに変わってしまった彼女をみると何とも言えない気持ちになるだけだ。
現在グレイトフルデッドを崇拝し、ボブディランを引き合いに出す彼女の本質は何なんだろうか。さっぱりわからぬまま、彼女の眼だけが死んでいく。