日本語HIPHOPがメインストリームになるのはもう諦めましたと思う前にちょっと俺の話も聞いてみてくれ

さて、昨日これ読んでからいろいろ考えちゃいましてね。

日本語HIPHOPがメインストリームになるのはもう諦めました
http://ese.hatenablog.com/entry/2017/01/25/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9EHIPHOP%E3%81%8C%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%AF%E3%82%82%E3%81%86%E8%AB%A6%E3%82%81%E3%81%BE

ほんとね、去年は間違いなくラップブームでしたよ。思った以上にキッズたちがラップの話題をしている。いやー「こんな時代を待ってたぜ」とようやく言える時代になったのですよ。
でも、これというヒット曲は出なかった、これも事実なのだと思います。

2016年売上枚数 - 日本語ラップ編 -
http://blog.livedoor.jp/colvics/archives/52236813.html

suchmosがデイリーで3万売ったなんて話を聞くとますます「ラップブームってなんだったんだ…」と嘆息したくなるような枚数。

でもね、ラップブームであったことは間違いないと思います。自分ダンジョンも高ラもぶっちゃけなめてました。もちろんそれの源流となるUMBも戦極からの歴史も含めて、これらのコンテンツが地方のラッパーたちに与えた影響や夢は計り知れないと思います。ここで蒔いた種は今だけでなく10年後ぐらいにも大きな影響が出てきてるはず。


さて、それでは本題の「日本語HIPHOPがメインストリームになること」なのですが、ちょっと前に自分高ラのリニューアルというか路線変更に関してこんなツイートしたんすね

ヒップホップ的な意匠を後ろに引っ込めてGreeeen的なJ-POPのラップやニコラップ的なものも巻き込んでのスタイルウォーズみたいになったら逆に面白いと言うか、世界中探してもそんな番組見たことないみたいなMCバトル番組になる気がするが、絶対そういうのじゃないと思うしな
https://twitter.com/komtarr/status/823371936205914112

で、引用でもリアルでも言われたのが「Greeeenってラップなの??」なんですよ。これに関しての自分の答えは「間違いなくラップだと思いますよ」なんですね。ヒップホップではないかもでしょうが。「あんな歌ってばっかいるのがラップ??」って話もありました。ネットラップの話をしてたときにもあった気がします。ネットラップ歌いすぎ問題。でもこれも「ギャングスタラップとかむちゃくちゃ歌ってるしいいんじゃない」って感じなんですね。あくまで私見ですが。


以前にカラオケ屋にいたことがありまして、そのときに感じてたことではあるんですが「ケツメイシGreeeenをラップだと思う」層って結構たくさんいるんですね。好きか嫌いかの問題ではないですよ。そしてこれは個人的に思ったのですが「吉幾三はラップ」と言う勢力とこの辺の親和性は高い。そして多かれ少なかれそういう層は「ヒップホップは悪いやつは大体友達の音楽」だと思ってるんですね。


元記事でこのように書かれてましたが

かくして、「ラップは嫌いではないけど純HIPHOPは好きではない」という一般層の壁を越えられていない、というのが現状なのではないかと思うのです。
昨日今日ではなくしばらく前からラップが一般的になっているのにヒット曲が出ないというのは、世間の「認知」の問題ではなく「好み」の問題なのでは。

ここは実に同感です。というか自分も含めてかもですが、やはり「ヒップホップのイメージがジブラで止まっている」のが最大の問題なのだと思います。日本語ヒップホップは「悪いやつらは大体友達」と言ったスターと「本当に悪いやつらが大体友達だったフッドスター」によってパブリックイメージが出来上がったと思います。それに対する対抗軸やアンチはあったとしても、ここが本線だったのだろうと。しかしそのイメージはもう過去のもので、今ではLDHがその地位にいる。日本語ヒップホップのパブリックイメージはいつまでたっても変わっていかない、これはもはや音楽の問題以上に「ラッパー像が変わっていない」という問題に尽きるのだと思います。


ただいきなりスターが飛び出て来てすべてを塗り替えていくと言うのもなかなか宝くじな話だと思います。SKY-HI先生はそこを明言してチャレンジしてるのはむちゃくちゃ凄い。尊敬します。ただそういう一発逆転ってあんのかな…って思うと不安になってしまう。そういう意味で今むちゃくちゃ期待してるのがANARCHYなんですね。なんだかんだ言ってLDHで新たなフッドスター像を作ろうとしてるし着実に作品も出していってる。その中で孤軍奮闘するANARCHY。ANARCHYだからできるんだよなあ、と最近は思うようになってます。


個人的には今の日本の「ラップ」はむちゃくちゃ面白いと思っています。海外とカルチャーが違うからこその進化なんだと思うんですが、昔から日本語ラップにあるリリカル信仰によって生まれるむちゃくちゃな叙情性、もはやパズルに近い韻踏みに対するこだわり、さらにそれを当意即妙に反応するというリアルタイム性。日本においてのテクニカルなラップというのはどちらかと言うと「言ってる内容」に属することが大きい。スキルとは「うまいこと言う能力」だと思われている。それだからこそラップ言語の幅は広がり続けている。これはヒップホップ的な進化とは別ベクトルの進化であり、いわゆる海外のメインストリームとはどんどん離れていく話なんだと思っています。


本来ヒップホップ=ラップではないですが、ヒップホップ≧ラップぐらいの位置関係にはあったと思います。ただ日本ではヒップホップとラップは別ベクトルの進化をした。だから「日本のヒップホップで全然ヒット曲が出ない」のは「昔の日本のヒップホップのパブリックイメージが強すぎる」からであって「ラッパー像がアップデートされていない」のに尽きるのだと思います。昔DE LA SOULが出てきたときに「あんなナードのやつらが」みたいな言い方をされてましたし、トライブもベトナムのわらの帽子みたいなの被ってて「アレはヒップホップなのか」みたいな話もありました。ヒップホップはアップデートしていく音楽です。で、実はもうアップデートはバンバンされていっている。それはヒップホップの現場であったり現場でなかったり。


「日本語ヒップホップは近いうちにメインストリームになる」と自分は思っていますが、それが昔からあるヒップホップの系譜にあるものかどうかは正直わからないなと思います。個人的にはまったく別のものであっても面白い。というかたぶんそうなる、周辺の状況は全部そうなってきてる、あとは時間の問題だと思ってます。