そのCDをレジに持っていく必要性が本当にあるのか〜CCCDとコンテンツ産業

 申し訳ないです。文章とんでもなく長いです。ただ、どうしても腹が据えかねることがありまして、こんな長文になりました。興味がある方は読んでみてください。


 最近良く考える。今のCDに3000円*1の価値ってあるのか?3000円で出来ることをほかに山ほど想像してみる。3000円。欲しかった服、いつもよりかなりゴージャスな食事…けっこういろんなことが出来そうだ。さて、その3000円をCDにつぎ込む。聴きたかったから買ったんだ。その通り。気になるし、前から好きだったりもしたし、何しろこれを聴くことによって自分の生活にちょっとだけ色がつくような気がする。何色にせよ。でも、この「CD」という物体、オブジェクトに3000円の価値があるのだろうか?


 アナログからCDへの移行期を思い出してみた。アナログはやたらでかくって、聴いてる時にも流し聴きってできなかった。表裏を20分位ごとに替えてやらないといけなかった。その時はそれをめんどくさいなんて考えてなかった。それしかなかったし。
 CDというものが登場した時、いろんな意味で驚いた。小さい。表裏がない。音が劣化しない(らしい)。でも高かったし*2、プレーヤーもまだ持ってなかったから買ってなかった。でも次第にアイテム数も増えてきて、知らぬ間に家にCDは増えていった。音楽作品にA面とB面があったことなんてすっかり忘れてた。「A面トップ、A面ラスト、B面トップ、B面ラスト」っていう概念がアナログの時にはあった。レコードをひっくり返すのは幕間の時間って感じだったんだ。でもその代わり、自分の好きな曲だけリピートできたり、プログラムして好きな曲をつなげて聴いたりっていう楽しみが生まれた。作品自体もCDの時代になって曲順とか録音は変わったんじゃないだろうか。
 今まではオリジナルのテープを作ってウォークマンで聴いてたが、CDウォークマンに変えた。CDは何しろ便利だった(そりゃ最初の頃は音飛びしまくってたけどさ!)。前は3200円くらいだったCDも輸入盤とかだと結構安くなってきた。中古だって出てきた。この頃は、CDにお金を払う価値ってあったんだ。


 しかし今現在、コンパクトさという意味だったらMP3だってMDだってある。どこででも聴けるという利点もレコード会社はCCCDという形で放棄した。CDの持ってるイニシアチブは全部崩壊してしまった。持ってて嬉しい要素が一つもない。唯一のよりどころは「データじゃなくて物である」という1点でしかない。ただここだって、僕なら同じ値段出すんだったらアナログのほうが嬉しい。でかいし、写真だってきれいだ。写真集がついてますって言ったって、あんな小さいサイズの写真集じゃ良さも半減だし。正直CDを買うのは惰性でしかない。もっといいのが欲しいなと思いながら、それしかないから買ってるだけ。


 実際問題、素人目から見たって、昔に比べりゃレコーディング費用もCDプレスの値段も安くなっているはずだ。ハードディスクレコーディング、メディアは激安。ケースだって昔に比べりゃ本当に安くなった。そういう状況にあるにもかかわらず、CD自体を安くしようという考えには向かず、レコード会社はCDが売れないと大騒ぎし、CCCDというものを持ち上げてみたり、過去作品をボーナストラック付で無理矢理再発してみたり、紙ジャケにしてみたりとお忙しいことだ。


 しかし、どの策も「コンテンツ」を作るという産業体としてはお粗末な物だってことに何で気づかないんだろう?レコード会社はアーティストが制作した作品を大量頒布用に複製して販売することが主目的だ。お題目では「作品」という文化の普及のために「複製して大量頒布」してるはずだろ?「作品そのもの」を買うわけに行かないから「複製」を売ってるんだろ?言うなれば原画とポスター。原画を買えない人がその雰囲気だけでも欲しいからポスターを買うんじゃないか。中にはポストカードでいいって思う人だっているだろう。CDだってそれと同じだって事になぜ頭が向かわないんだろう?CDという形態にこだわることがこのご時世にどれだけの意味があるんだろう?CDが売れなくなったという割に市場に出回るCDタイトルは増えている*3。その全てが現存のCDという一つのフォーマットでリリースされることにどれだけの意味があるんだろう?音楽なんておまけでいいアーティストだっている。強烈にすばらしい音響で聴きたいアーティストもいる。明らかに不特定多数に向けて発信したいアーティストもいる。特定の人に向けての音楽だってある。効果的な頒布方法として、CDというのは必ずしも正解ではない。方法はアーティストそれぞれにあるはずだ。


 そして現状CDが売れない理由は明らかだ。「そのCDにその値段の価値がないから」でしかない。その事実に目を伏せ、景気のせいにしてみたりして、M&Aでこの苦境を乗り切れるとか甘いことを考えている会社に未来はない。縮小して沈んでしまえばいい。MP3が主流になるともアナログが復権するとも自分は考えてない。適正な商品を適正な価格で販売しない会社が沈んでいくだけだ。少なくとも「客が欲しがる商品」を売ってくれ。「客が欲しがる商品」のポイントはクオリティなのかもしれないし、価格の問題かもしれない。それをリサーチするのが仕事だろ?今のままではダメだってことだってわかってるんだろ?
 

*1:ここで言ってる「3000円」という単位に意味はない。別に2300円でもいいし、1200円でもいい。要するにCDというものにお金を出すという行為に対しての意味。

*2:平均して3200円くらいだった

*3:日本レコード協会のホームページを見る限り、今年は多少減少傾向にある。しかし未加盟のインディーズレーベル、自主製作タイトルなどを含め、自分たちの目に入るタイトル数は明らかに増加している