JASRACと著作権料の矛盾と不誠実さ

JASRACyoutubeやニコニコをはじめとした動画投稿サイトは包括契約を結んでいて、売上の原則2%をJASRACに支払う事でユーザーの自由な投稿が許される形になっている。この方式はブランケット方式とも呼ばれていて、テレビ局やラジオ局も同様の契約形態になっている。

個人的にはやはりこの契約形態自体が気に入らない。理由は数点ある。

1.支払いが不明瞭になること

まあ、昔から言われていることですがね。誰の楽曲をいつ何秒使ったとかの記録ってどこにも残って無いわけです。だからJASRACもざっくり回収してざっくり支払ってるんです。youtubeのカウント勘定して支払っているわけではないわけです。そもそも例えばアーティストのMVがあったとして、公式でUPされたものとと非公式でUPされたものは著作権上では差は無い。両方のカウントを合計した上で著作者にキッチリ支払いをするべきものだが、実際は不可能に近い。UPされた家族映像のBGMで流れていたりもあるのかもしれない。そんなのどうやって調べろと。
ただ、現状の著作権法および著作権の考え方だと「カウントするべき」なのだ。原則論として。あいまいにするべきではない。あいまいになって損をするのがアーティスト当人である以上、管理団体がそこを「まあまあ」とするべきではない。そこをまあまあというのは「音楽事務所」や「出版社」の役目だ。


正直難しいのはわかっているが、その本線がぶれるとただの利権団体に見えてしまうのがJASRACだ。そしてその一番のブラックボックスはこのサブスクリプション型の著作権徴収+分配システム。妥協の産物のこの仕組みをどうやって信用しろと。

2.過保護すぎること

ちょっとわかりづらいかもしれないが、個人的にはJASRACがそこまでアーティストの著作権をケアすべきなんだろうかと思っている。時代もだいぶ変わり、昔だったら「コロムビア専属作家」みたいに、著作権も販売権も何もかも買い取りみたいになってたけど、その後レコード会社やレーベルじゃない第3者団体が「著作権を管理する」という仕組みが出来、一応名目上は著作権は管理され、やり取りも大幅に楽になったし、作者の権利も守られたのだろう。
ただ実際はレーベル内の出版社に振り込まれた金銭が正しく著作権者の元に届いたのかなんて誰もわからない。確認しようがない。ここでも新たなブラックボックスが生まれている。JASRAC音楽出版社、レーベルとのつながりは強くあるんだろうが、JASRACが大きくなればなるほど一般の著作権者との距離は遠くなる。遠いのにでも著作権は全部保護しているという矛盾。もうそこまでJASRACがやらんでもいいんじゃないか。

3.時代に合わないこと

テレビ局やラジオ局の理屈を以ってネットでの著作権を管理している時点で世の中が見えてない。今の手法をとるならもっと真剣にyoutubeやニコニコの1クリックを確認するべきだし、そうでないなら仕事を少し分割した方が良い。少なくともネットでの広告モデルはもう閉塞感にあふれている。この時点でテレビ局やラジオ局とは違いがある。

個人的にはネットでの著作権管理とCDなどに代表されるリアルコンテンツでの著作権管理は分けるべきだと思っている。サイトやサービスを運営するWEBサービス側が著作権支払いを直接行うべきなんじゃないかと考えている。それを調査代行する業者が出来るとしても、運営側であるWEBサービス側がここに対して責任を持たないとこの問題は解決しない。アーティストとリスナーと場所を運営する役割の人間がリレーションが取れた上で、この中で金銭の授受があり、そこからアーティストに支払われる仕組みがベストだ。


結局見た目は今の仕組みと変わらないのかもしれない。JASRACという巨大な調査代行会社があって、レーベルがあって・・・。ただ、責任の所在をどこに置くかで中身は大きく変わる。そのビジネスの仕組みと客が見えている人間じゃないと、ネット社会での正しい著作権のあり方なんて見えてこない。


ああ、一番大事なこと忘れてた。

4.このままだとユーザーはみんなネットのものはタダだとしか思わなくなるしもはやそうなってる

結局著作権ってあくまで利用者が著作者に払うものなんだけど、その間にいるいろんな人間がごまかしごまかしでやってるからややこしくなる。特にネットなんか顕著だ。これに対して「パソコンに課金」とか「ipodに課金」とかふざけてる。税金の発想だ。それで反発だけ買うから「JASRACはクソだな!」みたいな短絡的な答えにしか行きつかなくなる。「あいつらに金払うのやだよね」ってなる。間違えちゃいけない。著作者に払うんだ。その仕組みを作らんでどうするって話なんだが・・・ああ、こんな話10年前もしてた気がする。


JASRACは現時点の枠組みでは役割を果たせなくなる気がする。少なくとも、ネットサービスでマネタイズモデルが出来てから一部を徴収するという発想は、新しいネットサービスを阻害する事にしかならないし、あまりに短絡的だし不誠実だ。