制服向上委員会(SKi)のわけのわからんバックボーンを高橋Pの歴史を振り返りながらもう一度整理してみる

結成1992年。もうすぐ20年ですよ。日本の継続しているアイドルグループとしては最長になるんじゃないか。
モーニング娘。よりも長い歴史の中で生まれた曲は、著名作曲家も数多く参加し、現在でも色あせない曲もある。さらに一早く卒業システムを取り入れグループ自体の新陳代謝を促し、AKBより早く制服ベースのコンセプトスタイルを確立し、専用劇場を持っていたSKi。


まず、SKiを語る上で忘れてはいけない人がいる。プロデューサーでもある高橋廣行。彼が一貫してコンセプト、スタイルなどを牽引してきた。さてこの高橋廣行、灰野敬二率いるロストアラーフのパーカッションをたたいてたことでも知られている。この頃の高橋は裸のラリーズとも親交が深く、一時は水谷敬と灰野敬二と高橋とでBlue Cheerのカバーをやるユニットが企画されていたらしい。灰野+水谷か…まさに伝説。
で、その高橋はその後音楽活動からは一歩引く(頭脳警察のヒロシとのセッション音源などはあるようだが)が、意外なところで名前を見るようになる。「アダン音楽事務所」だ。日本のロック黎明期のイベントを支えたイベント事務所。RCサクセションのイベント設営を手がけていたことで、一部で有名。↓の画像はアダンが出していたフリーペーパー。もう伝説しか載ってないわけで。「ライブハウスで一番人気のRCサクセション」とか。

その後なぜか制服向上委員会を作ることになるのだが、その前に高橋の名前は映画プロデューサーの名で散見される。例えばこんなの。

サイキックビジョン 邪願霊 〜狙われた美人キャスター〜(1989)
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=86595#1

【解説】
アイドルのプロモーション模様を記録したドキュメンタリー番組を撮影するスタッフに巻き起こる怪奇現象を描いたホラー。

あとは吉成圭子がらみの「IKENAI!いんびテーション」「Bバージン」とか。おそらくこの時期にはアイドルのプロモーションをするノウハウなどの吸収に入っていたのだろう。つーかヤンマガ原作のプチエロばっかりだな。ちなみに吉成圭子はこの後の「工業哀歌バレーボーイズ」にも出ている。全部同じメーカーかと思ったら全部違うのな。びっくり。ちなみに吉成圭子はその後制服向上委員会の名誉総代という位置に上り、後述するアイドル・ジャパン・レコードの取締役にまで上り詰めるが、97年になぜかすっぱり引退。昔から「ライブやりたくない」などのきな臭い発言の多い方ではあったが、引退後なぜかプロ麻雀棋士に転身。趣味はパチンコ。今どうなってるかはよく知らない。

そして制服向上委員会の母体となる作品「新・東京女子高制服図鑑」を高橋プロデュースで出す。92年のことだ。もともと森伸之の著作で人気を博した「東京女子高制服図鑑」の便乗作品だったのだが、本のヒットに引きづられるように人気を博した。ちなみに森伸之美学校考現学教室(赤瀬川源平!)在籍時に、ノート2冊にまとめたレポートを提出していて、それがこの本の土台になっている。装丁を南伸坊がやっているのもその絡みだろう。ああ、80年代の香り。ビデオの作成と時を同じくして制服向上委員会を結成。「新・東京女子高制服図鑑」が制服向上委員会のプロモーションビデオになってしまうという軒を貸したら母屋を取られた状態。しかしまあ、こまばエミナースを常設劇場として活動をするSKiはそれなりに勢いがあった。


その後自らレコード会社「アイドル・ジャパン・レコード」を設立。ここからSKiの独自路線はより強化されていく。アイドルブームはとうの昔に去って行ったが、SKiは活動し続けた。いわゆるTVアイドルを目指さなかった事はSKiを地下アイドル化したけど、延命させる要因にもなった。「日本一高いFC」だったSKiはその収入のほとんどがファンクラブ収入だったという。ただ、アンチ芸能界というスタンスで活動していたのが、AKBやAKBNとSKiを分ける境目だったんだろう。しかもハロプロが2006年位からエコやら舞台やらに傾倒していくが、SKiは先駆けてそれをやっていたわけで。そういう意味で考えると凄いオリジネイターである。

http://www.idol-japan-records.net/index.html

高橋がその間に数々のイベントをやっていく中で、合流したのがPANTA頭脳警察)であり、加納秀人(外道)、中川五郎であったりした。それらの新音源をリリースすると同時に、SKiとからめることも忘れていなかった。2001年に初台DOORSを開店してからはSKiの常設劇場はここになり、70年代の伝説と制服向上委員会の店というとんでもない構図が出来上がる。PANTA加納秀人、佐々木忠平(めんたんぴん)などからの曲の提供を受けるアイドルがここに誕生したのだ。SKiの公式ミニコミ誌には灰野敬二のインタビューまで掲載されている。


作曲陣に目を向けると高井寿という名前がある。現在はギタースクールを開いたり、サポートギタリストとして活躍する彼、元Xである。EXTASYレコード記念すべきカタログナンバー1はXの「オルガズム」EPだが、その写真の一番右端が彼だ。ちなみに彼は反原爆のコンセプトアルバムを作っている。金田一郎も超大物だ。梅沢富美男から「ひとりでできるもん」のテーマ作曲まで何でもこなす作曲界の大物。もう今は見えなくなってしまっているけど、日記がまるでパックインジャーナルを見ているようだった。ちなみに一番多くの曲を書いているのは羽毛田丈史だ。ゴンチチ葉加瀬太郎などのプロデュースや「image」などのシリーズでおなじみの癒し系だが、SKiにはほんとに多くの曲を提供している。しかし彼のオフィシャルサイトでも、ファンページでもなかった事にされているのが何とも残念。


そう、SKiのもう一つの側面「戦うアイドル」を育んだのは、高橋の周辺にいる数多くのミュージシャンたちだ。路上喫煙反対のデモとかもやってたな。ちなみに初台DOORSは禁煙である。反戦、環境破壊反対なども重要なテーマになっていった。ただ、どうしても敵が見えづらい世の中では中途半端な色物イメージになってしまっていた。


だが民主党政権誕生などの事件を経て、高橋の何かに火がついたようだ。SKiはデモの先頭に立ち、オルタナティブの闘士として再度前線に立った。「社民党党首、福島みずほ議員に“自転車のマナー作り”を請願」とかどんだけだと。そして震災後は「ダッ!ダッ!脱・原発の歌」などをリリースし、確固たる高橋イズムを見せつけている。いや、IJR(アイドルジャパンレコード)イズムだな。

今SKiのライブは「大学生無料」という方針を打ち出している。ピンチケ上等である。通常のアイドルならば「なんて無謀な…」と思うところだ。いたいけな少女が接触厨に食い物にされるだけじゃないかと。しかし、SKiに関しては全く心配していない。あの高橋Pと、あの重厚な客層で、しかも脱原発反戦、環境破壊反対、ボランティアなどを教え込まれるのだ。逆にオルグされちゃう。また面白いのが周辺ミュージシャンたちの変化だ。あのPANTAが「東京女子流、本当クオリティ高いね!」「SUPER☆GIRLSってまず名前がダサい」「(MAX!乙女心を聴いて)曲のタイトルがコピーライト的発想だもん」「アイドリングっていまいちブレイクしてないよね」って言うんだぞ。10年前の俺に教えてあげたい。そして10年前の俺に「嘘を言うな!」って殴られたい。


むちゃくちゃ長く書いたが、個人的には高橋Pの事は大好きだ。わかりづらいし共感は出来ないが筋は通っている。そして彼の発言を最後に貼っておこう。これは全面的に支持する。

2000 女の子は良い。可愛い女の子は良い。可愛い女の子の気持ちが良い。
    可愛い女の子の喜ぶ気持ち が良い。可愛い女の子の喜ぶ気持ちと
    笑顔が良い。可愛い女の子の素直さと喜ぶ気持ちと笑顔が良い。
    その逆は犯罪である!
http://www.idol-japan-records.net/news/index.html
2010年10月「SKiの作り方」より

ああ、同感だよ。男はそれを守るために戦うべきなんだよな。