はてなダイアリーが選ぶ名盤百選 その75

komtarr2004-01-29

 id:Tamakiさん、改めて回してくれてありがとうございます。音楽好きだと認識してもらえてたようで、なによりもそれが嬉しいです。さて頑張るぞ…なんて考えてCD棚の前に立ったはいいのですが、そこから先に長い沈黙が。
 自分の音楽好き遍歴をざっとかいつまんでいくと、80年代洋楽(ベストヒットUSA)→フールズメイトを読みまくる→テクノポップニューウェーブの変人性に思春期のアイデンティティを見出す→思い立ってYBO2ジャケ買い→トランス、ナゴムなど日本インディーズが肌になじんでどうしようもなくなる→ハードコアパンクが楽しくてどうしようもなくなる→もっと早くてうるさいのを…と考えていたら道を間違ってノイズにはまる→カラフルなものが急にまぶしくなってマンチェスター好きに→テクノが頭がいいと思い出す→飽きてヒップホップにはまる→元ネタほじりから派生してファンク、ソウル、フュージョンをあさり出す→音楽になぜか飽きる→急にメタルがいとおしくてどうしようもなくなる→収拾つかず…というのが大雑把なところ。平行してアイドルとか。ポリシーもクソもあったもんじゃありません。CD棚の前で途方にくれちゃいました。


 そこで、今回は自分にとってキーポイントになったこの一枚を。

 1992年発売。知らない人もいるとは思いますんで、概略を。メタルです。ゴリゴリの。「COWBOY FROM HELL」はジャーマンメタルをスラッシュ寄りにしたような感じだったのですが、「VULGAR DISPLAY OF POWER(邦題:俗悪)」で爆発。スラッシュのソリッドさ、パンクの暴力性、メタルのねちっこさ、すべてが一体となり唸りを上げて攻めてくる90年代ロックに燦然と輝く金字塔…ってな感じであっちこっちの言葉を引用してみましたが大体お分かりでしょうか。
 ただ、このアルバムが印象深いのには大きなわけが。この時期、自分はメタルがほんとに嫌いだったんです。もう、嫌で。うまく説明できないけど、頭が悪そうだったし、時代遅れな気もしてたし。同じ頃流行ってたニルバーナに関しても「グランジはメタルじゃなくてロックだ」って言い張ってました。今考えれば、狭い視点でしかもの見てなかったんだなって思いますよ。
 まぁそれはともかくパンテラです。この音には度肝抜かされた。何が驚いたと言って、音の構成パーツは明らかにメタルなのにそれをアホのように気に入った自分に驚いた。で、自分理屈っぽい人間なんで考えるわけです。なぜこれを気に入ったんだろうって。
 で、それが気になってほかのメタルも聴いたりしたわけです。あの頃だとガンズが盛り上がってきて、西海岸スラッシュの連中が結構はちゃめちゃやってたりしてて、いろいろ面白いのはあったのですが、自分の中で決定打となる理由(言いかえれば、いまさらメタルが好きになったと友人に言う言い訳)がなかったのです。
 そして雑誌のインタビューとかも読むようになるわけです。。パンテラはドラムのヴィニー・ポールがリーダーで「世界で一番大切なものはなに?」「…肉かな」と答えるようなミック・フォーリー(akaカクタス・ジャック)似のナイスガイ。彼のインタビュー記事でちょっと開眼するものがあったのです。
「一番好きなミュージシャンは?」
「ディペッシュ・モードだな」
いや、これだけ。ただこれだけなのですが、自分にとって大きかったんです。
 自分はディペッシュ・モードも好きですが、あのバンドの好きなところは統一された音のムードと音の重さです。そう考えた時、「あ、パンテラも俺にとって一緒だ」って思えるようになったのです。


 そこから先は雪崩式。ヒップホップだろうがロックだろうがハウスだろうが何だろうが、ジャンル関係なく自分の尺度で音楽が聴けるようになった気がしますね。またジャンルを気にしなくて良くなりました。「何々系だから聞いてみよう」とかいうのがなくなりましたね。自分にとっていい手触りの音楽を聴けばいい、ただそれだけのことに気づくのにえらい時間がかかったなぁ。
 

 音がソリッドで、すさまじいグルーブ感を持っていて、血が滾る感じなのにどこかしらメランコリックなところも秘めていて…ヒップホップだってそうだしテクノやハウスだってそう。いまさらジャンル云々するのもばかげてる…という話を以前DJ BAKUくんにしたら「そうっすね、パンテラ、カッコイイッすよね」…と単純明快に返してくれた。そう。だらだらと書いたけど結局そういうこと。
 パンテラ、カッコイイっす。