ライブハウス/クラブにまとわりつく残念な寓話

さて。前回のエントリー「ダンスホール業界に必要なものとは」の続きみたいなものですか。


マチさんが提起してくれた様々な問題。これがわかりやすい形で他のジャンルでもわかるようにイメージするとこういう絵面になる。もちろんフィクションですよ。

かつてはそこそこの集客があったイベント「○○」も3年経ち、盛り上がりはだいぶ少なくなってしまった。イベントスタート時は、当時日本で誰も紹介する人がいなかった「××」というジャンルをいち早く紹介して、耳の早いリスナーを中心に盛り上がりを見せた。その当時のスマッシュヒット「▲▲」がかかった瞬間にフロアの熱狂は最高潮になり、あまりの盛り上がりに振動で近隣からの苦情があった事もあったくらいだ。
今日の集客は非常にさみしいものだった。2時には数える程しか人がおらず、しかもほとんど知り合い+彼女といった具合。フロアに人は出てこなくなった。「▲▲」だけは知名度の高い曲なので、フロアに多少人も出てくる。しかしその後に最新の曲をかけるとすーっとフロアから人が消えていく。おかしい。現地では最強のパーティーアンセムだってレコ屋のPOPに書いてあったのに。
DJ陣やパフォーマーは3年前と変わりはない。あえて変えていないのではなく、変えられないのだ。ここのDJたちも他にプレイする場所がないし、他のイベントでは最新モードの「◎◎」を中心としたDJが中心で、自分たちの今までプレイしてきたジャンル「××」は「古臭い」と言われかねない。かつてこのイベントを手伝ってくれていたDJは自分たちで別のイベントを立ち上げたらさっぱり来なくなった。DJスタイルを変えようにも現場がここしかないため今さら変えられない。必然的にプレイヤーはそのあたりの事情がわかるメンバーで固定化していく。
このイベントは今やめるかどうしようかの境目に立たされている。主力DJの一人が帰省して実家を継ぐと言い出したのが発端ではあるが、もうだいぶ昔からお金は回っていなかった。皆バイトをして持ち出しでがんばってきたのだ。クラブ側からは「続けてくれ」と言われているが、かといって箱代が安くなったわけではない。さてどうしようか・・・

新陳代謝を失い固定化するプレイヤー、流動性のないそれぞれのイベント、いつものメンバーしか来ない(しかもじわじわ減っている)現場。つらいな。つらい。誰も悪くないだけにつらい。繰り返しますけどフィクションですよ。

風営法に対処しながらクラブカルチャーの地位をあげ新しくシーンを担う若手の育成を同時に行う方法

風営法の問題が取りざたされて久しいですが、相変わらずピントのずれた方向で活動をしている皆さんがいる。

http://www.letsdance.jp/about/
請願事項

1、風営法の規制対象から「ダンス」を削除してください。

2、行政上の指導は、「国民の基本的人権を不当に侵害しないよう」に努め、「いやしくも職権の乱用や正当に営業している者に無用の負担をかけることのないよう」とする「第101国会付帯決議」(衆院1984年7月5日)や「解釈運用基準」(2008年7月10日)にもとづき適正に運用してください。

3、表現の自由、芸術・文化を守り、健全な文化発信の施策を拡充してください。

あのな。「ダンス」は規制されてない。「ダンスする場所」に関して規制をする法律はある。だからこの請願の1と3はそもそもピントはずれなんだ。2に関しても、この前の六本木の一件で評価は地に落ちたぜ。例の事件のあった「フラワー」も店長だけすげ変えて「スタジオゲート」と名前を変えたはいいが、無許可営業。どれだけ危機感ないんだって話で。自分らで自分らの首を絞めちゃった。これは「表現の自由が大事だから保護されるべき」なんて話とは別問題だ。最低限の法律も守れなければ社会にいる価値がないって判断されるのは致し方なかろうて。
まあ、でもその辺の話はちょっと置いておきます。磯部涼氏の「踊ってはいけない国 日本」もまだ読みかけで、自分の中でもいろいろ考えている最中なんでその件は改めて書きます。


で、タイトルにも挙げた「風営法に対処しながらクラブカルチャーの地位をあげ新しくシーンを担う若手の育成を同時に行う方法」です。
最初に僕の答えを言っておきますね。「キッズ向けのデイタイムダンス+DJイベントを行う」です。


メリットとしては、ダンス教室に代表されるダンスカルチャーとDJやMCなどのクラブ側の人間が共同戦線を張れること。キッズが踊れる場所を昼に作り、そのDJをその土地の人間が行う。そのイベント自体は当然昼に行うものだし、「青少年育成」の旗印を掲げれば、行政などの協力も得やすい。何はともかく「踊るって楽しい!」って思って練習して発表会まで頑張ってる子どもがたくさんいるんだ。その集団と連携をとらないでどうする。
このサイトは日本で最大級の「キッズダンス」のポータルサイトだが(http://www.dance-style-kids.com/index.php)このサイトには月で380000PVある。ここの子たちはみな「踊る」のが好きでクラブファッションやヒップホップやハウス、レゲエに興味を持って、親がそれをサポートまでしてるんだ。この子たちが大きくなって行くのは現状ではクラブではなく「YOSAKOI」だよ。

子ども向けだからと言って別にサウンドまでお子様にする必要はない。全力のサウンドを子どもにぶつけてみたらいい。意外に「こんなの初めてで面白い!」っていう子どもは多い。
そしてもう一つ、クラブカルチャーを体験した親世代(20後半から30後半?)を再びイベントに巻きこむことが出来る。子どもがいて夜遊びはなかなかできない。クラブミュージックが好きでも昼には触れる機会もないから結局疎遠になる。将来を担う若手はクラブ好きの親からダンス好きの子供に引き継がれていくんだよ。


クラブカルチャーが育んできた「DJ」「MC」に新たなステージを与え、ケータリングやペイントなども堂々と太陽の下でできる。夜のクラブのステージでできることは昼でもできるんだよ。


それでも「酒」「クスリ」「セックス」とのクラブカルチャーから離れたくない人は多いだろう。まあそれもよい。ただ「見えない所でひっそりとやれ」だ。イリーガルなことをやっておきながら権利を主張するな。スピード違反で捕まった後に「前の車の方がスピード出してた!」とかは言い訳にもならないんだ。


結局は「仲間を増やせ」「活動場所を増やせ」「世代をまたげ」が一番言いたいことです。